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天下国家を語る志し [21世紀の種]

世論として政治や風俗を語るとき、どの様な視点で語っているだろうか。そして論じられる世論を読み取るときに、語る者の視点で語られているという事を考慮に入れながら読んでいるだろうか。

近ごろ思う様になったのは社会の基本的な理念の変化である。もちろん長い歴史の中で考えれば今に始まったものではないが、昭和生まれの私としては考えを根底から揺るがすものも多い。
よく昭和時代に公開された邦画・名画の数々を見ていて思うのは、現代と比べて根本的な変容であり、戦前のものではモラルや道徳規範の部分であったり、戦後はやはり学生の社会的意識の様に思う…。この辺が変わるとものを語るときに指針とする基本的な概念や視点が変わって、過去の基準が意味を為さなくなる。つまりすべて過去は間違いだったという事になってしまい、新しい考えに全てが靡いてしまうという訳だ。

ここで云いたいのは、どちらが正しくてどちらが間違っているという話ではなく、今語られている話は、今の価値観を前提にして語られているに過ぎないという事なのだ。これが正しいなどと分かったかのような顔をして自信たっぷりに語る烏合の衆の言葉に乗せられず、自分自身の言葉で語る事が、天下国家を語る者の努めだろうと考える。
時代の流れに乗ってゆく事は大切だ。ノスタルジックな気分で温故知新を訴えるわけではなく、よく吟味しながら時代に沿ってゆくという心構えが必要だと思っている。

若者たち2.jpg

この歳になって改めて観た『若者たち』のTVはとても新鮮で感動すら覚えた。
この感覚は一体何だろうか?私たちは本当に成長しているのだろうか?

 
【余談:『若者たち』の残した “20世紀の時代の種” 】

「今の時代とは何かが大きく違っている…」そんな感じのした事が “考え”の始まりだった。
若者たちだからこそ持つ純粋さや正義感、そして希望や情熱。今では死語とさえなってしまっている気もする。そして何よりも日々の生活を営む経済状況が格段に違っている。しかし決してオーバーではなく、これが一般庶民の普通の暮らしだったのだ。
登場する五人の若者たちは両親を亡くしていて皆が共同生活をしている。今の時代ではあまり考えられない状況だが、当時ならあり得た設定だ。平成時代に『ひとつ屋根の下』というTVドラマがあったが、その頃の生活雰囲気とは随分違っている。

ここに最近公開された映画『若者たち』の紹介文があるので引用しておこう。物語の全体像が分かると思う。

<原文ママ>1966年にフジテレビで放送された連続ドラマ「若者たち」は、戦後の傷跡、貧困、学歴差別、学園紛争……など当時の世相、問題を鮮烈に描き反響を呼ぶものの、その社会批判性の強さにより、突然打ち切りに。しかし、放送終了後も圧倒的なファンの支持を得て、テレビ版と同じスタッフ、キャストで映画化。自主上映ながら、その感動と共感の輪はまたたく間に全国に広がり、1年間で300万人の動員を記録しました。

早くに両親を亡くした五人の兄弟妹──土建会社の設計技師、弟妹たちの親がわりとなって戦後の混乱をのりこえてきた長男・田中邦衛、遠距離輸送のトラック運転手で竹を割ったような性格の次男・橋本功、行動的なインテリの三男・山本圭、一家の台所を切り盛りする紅一点・佐藤オリエ、ドライで自己中心的な現代っ子だが、根はやさしい末男・松山省二──が互いに助けあい、時に猛烈に争い、ひたむきに日常を生きていく──。もがき苦しむ若者たちの姿がザ・ブロードサイド・フォーの主題歌とともに胸に迫ります。


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昭和40年代、まだ核家族という言葉に慣らされていなかった若者たちは、人々や社会との連帯の中に生きていた気がする。経済は高度成長期で昭和元禄と云う様な流行語にもなっていたが、多くの若者たちは社会の矛盾とぶつかり合いながら純粋な生き様を晒していた。ある意味で明治維新の起爆剤となった幕末の脱藩浪士たちの様な気概を持っていたかも知れない。だからこそ社会に対して声を上げることが自然であり必然であったのだろう。
時代の若者たちはその時代の流れに翻弄されて流れてゆく。常に次の時代の起爆剤となる若者の心情は、この次の時代にはどう移り変わってゆくのだろうか?

今ではもう懐かしさでしかない若者たちの心意気と辿った足跡は二十世紀の種として土深くに埋もれている。

 

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いっぷく

『若者たち』、石立鉄男が足に障害のある人の役で出ていましたね…テレビだったか、映画だったか記憶が定かではありませんが。
by いっぷく (2023-09-27 00:34) 

扶侶夢

>いっぷくさん、ご来訪&コメント有難うございます。
石立鉄男さんは映画の方に出ていたようですね。「若者たち」「若者はゆく」「若者の旗」と三部作が作られていてその頃配役され新人だった役者の多くはその後ブレークした人が多いようです。
by 扶侶夢 (2023-09-27 19:38) 

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