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「絶対」という言葉 [随想随筆]

「絶対」という言葉は私にとって、もうひとつ別の意味があった。
それは中学生時代に遡る。ある日、体育科の時間に級友たちと悪ふざけをしていたら、先生がやって来て一同を叱りつけた。私の目の前に立った先生に向かって「わかりました。もう絶対にやりません」と返事をした。その時に先生が言った言葉が「安易に絶対などと言うな」マジな表情で私を睨んで言ったのを覚えている。
この時の「安易に絶対という言葉を使うな」という意味がいつまでも私の頭に突き刺さり、大人になってからも一種のタブーになっていた。何かの会話の場面でも「絶対に…」という言葉が出そうになると頭のどこかから制止のサインが送られてくる。子供の頃からひとつの口癖でもあった「絶対に…」という話し方がこの時から出なくなり、このことに気づく最近まで五十年以上も続いていたのだった。

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確かに、何事においても絶対などという事はないので、それを簡単に口走るということは過剰な強調表現であり、形容詞として考えれば嘘の表現であり、自分の言葉に責任を持っていないとも言える。
そういう意味では使わなくなって良かったのかも知れないが「絶対」という言葉を使ってはならないというタブーな気持ちが私を制約し監視するようになって、それが言動を抑える一種のトラウマになっていた事がわかった。

いまでは絶対という言葉に対しての忌避感は無くなり、使う言葉に対する異常なこだわりも無くなった。
言葉は単に言葉であり、そこに心を込めなければ伝達するための手段としての記号に過ぎない。過剰に意味付けするのは自己主張から脱していない偏見と窮屈さの表れだと思う。
近頃ありがちな「言葉の意味に対する過剰な解釈」は人間をますますロボット化する一役を買うような気がしている。

 

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