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ネガティブ・ケイパビリティという考え方 [21世紀の種]

帚木蓬生・著「ネガティブ・ケイパビリティ」という本に“答えの出ない事態に耐える力”という副題が付いていた。言い得て妙とはこの事で、現代人が身に付けるべき必要なコンセプトがここにあると直感した。
従来の考え方に依れば、メジャー志向やポジティブ志向の偏りを正してマイナーとされるネガティブな思考も取り入れる意味と単に捉えられそうだが、もっと幅広く深い考え方の様に思える。それは別の答えを見つける模索ではなく、答えの見つからない状態を時を待つように受け入れる生き方とも云えるだろう。

単に反対側の視点に立ってものを見るというよりも、答えのない事を認めて受け入れるという方が難しいことである。そもそも人間の間違いを犯す理由の根本に『答えを性急に求める』ということがある。答えを得なければ落ち着かない、安心して納得できない性分が時には大きな過ちや嘘偽りを生み出している。自然界の中で人間だけが悩み苦しんで生きているのは、自然に逆らって答えのないものに答を出さずにはいられない性が原因のひとつでもあるのだ。

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人間の世紀がどれだけ続くのか分からないが、これから先も生き延びてゆくには必ず価値観と次元の転換を越えなければならない筈だ。そう考えれば、人間の歴史とは進化を模索する次元の旅とも云えるだろう。私は「ネガティブ・ケイパビリティ」という考え方が新しい次元の扉の鍵を握っている様に思える。
“ケイパビリティ”とは許容力とか理解・包容力として俗に言われるキャパ(キャパシティ)の類義語で「否定的に捕らわれている物事を、受け入れて理解し可能性を導く」と私は解釈しているが、行き先を見失ったかの様な時にこそこの思考が大切なのだと思う。最近ではビジネスシーンなどで「ソリューション(解決策)」という言葉がよく用いられてきたが、現代日本人は(米国思想教育の影響も受けてか)時を待つ解決方法というものを忘れてしまった様だ。自力で脱出口という“答え”を見つけようと足掻く現代病パラノイア状態に陥っている事に気づかないでいる。この流れを一時停止させて見直す切っ掛けが「ネガティブ・ケイパビリティ」の視点なのだと思っている。

私は色々な場面でこの様に語る事があります。「人は気づかない間に時代の流行の“後手に回って”追い立てられてしまう。そして一度追い立てられ始めたら常にプレッシャーで自分の意図と関係ない方向に流されてしまう。」だから“急がない選択肢”を持つことが余裕と自信を身に付ける方法なんです。それを実行させるのが“ネガティブ・ケイパビリティという考え方”なんです。



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風船かずら

人間が間違いを犯す根本の理由、性急に答えをだす。同感です。
by 風船かずら (2019-05-19 17:51) 

扶侶夢

>風船かずらさん、ご来訪&コメント有難うございます。
還暦を過ぎた人間だからこそそんな事を言えるのかも知れませんが、性急にそれも正解を引っ張り出そうという気持ちを改めなければ一向に安定した平和な解決策は見い出せないと思います。
時を待てと言うのは若い人には酷かもしれませんが、それを先達となる教育者は教えるべきなんだと思います。
by 扶侶夢 (2019-05-20 01:21) 

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