老犬の死 [随想随筆]
<5月17日>
今日の夕方、チャムが息を引き取った。
仕事中に携帯が鳴った。
妻の淋しそうな声「チャムが・・・死んだ」
実のところ危ないとは思っていたが、こんなに早く亡くなるとは考えていなかった。
「え!」と声が出て、しばらくしてから「そうか・・・」
ため息が出た。
今日はたまたま仕事が暇で、一時間程外に出られるチャンスがあったので、急いで家に帰った。
普段ならこうは行かないのだが、これも何かの運だろう。
家に帰ると、箱に入ったチャムが居た。
小さく窮屈そうに縮こまって、眠っているようだった。
雑種とはいえ、美人な柴犬だったから、可愛く美しい死顔だ。
頭や顎のあたりを撫でても、ピクリともしない。
昨日までなら嬉しそうに鼻先を動かしていたのに・・・。
もう何も届かないのか、無念な気持ちになった。
一旦仕事に戻って、再び帰宅したら
玄関にチャムの遺体の入った箱があり
下駄箱の上にはローソクと水の入った茶碗が祭られていた。
2日後に22歳の誕生日を迎える次女は泣いていた。
12年間、確かにチャムは家族の一員だったから
魂の抜け殻を見ると、様々な思い出が駆け巡るのだろう。
外では娘犬がキュンキュン鳴いている。
空しく がらんとなった犬小屋が明日からはどう映るのだろう?
_________________________
…あれから5年が過ぎた。
娘犬のミンクは、まるで母を追うかのように、それから3ヵ月後に亡くなった。まったく餌も食べず、なにか病でも発生したように衰弱してゆくのが分かった。もともと体の弱い雌犬だったが、母親のチャムに寄り添うように生きていた犬だった。
なぜ、突然亡くなったチャムとミンクのことを思い出したのか分からないが、それから年月が過ぎて今、我が家では賑やかに猫たちが8匹暮らしている。
<在りし日のミンク>
☆
☆
☆
☆
【平成18年/年賀状のミンク】
<亡くなる前に、「戌年の年賀状」に使用した写真>
物言わぬ生命が逝くのは辛いです。
by 斗夢 (2011-03-25 04:57)
愛情あふれる随想読ませていただきました。
おちゃめな年賀状ですね。
by 月夜のうずのしゅげ (2011-03-25 07:50)
抜け殻を残して、去ってしまったチャムの魂は一体どこにいっちゃったんでしょう。魂も消滅してしまうのかな・・・・。魂って何なんでしょうね。宿っているものだとしたら、いずれどこかへ行くものなのでしょうか・・・。
もし、魂が落ち合うような場所があるのなら、チャムとミンクはまた一緒にそこで暮らしているのかもしれませんね。
by t-youha (2011-03-25 08:56)
nice! &コメントありがとうございます。
>斗夢さん
辛いですね。だからこそ厳粛になりますね。
>月夜のうずのしゅげ さん
最後までお付き合いくださって有難うございます。実物のミンクもおちゃめな女の子でした。
>t-youha さん
数年後にふらっとやって来た、子猫の魂の一部にチャムやミンクがまぎれているかも知れません。
by 扶侶夢 (2011-03-25 23:28)