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小説「ゼロの告白」/第一章 [小説「ゼロの告白」]

【ゼロの告白/第一章】

 その男は若い頃から「どんな環境でも生きてゆける自分になりたい」と思っていた。
だから、時として自分らしくない自分を装って、自分にふさわしくない場所に飛び込んだりもした。
 常に様々な問題と直面したけれど、守りの姿勢を持たない私は緊張感こそあれ、それ程の恐怖心も感じていなかったように思う。
 青年時代に海外で放浪の旅をしたせいか、見知らぬ新しい土地に飛び込むことには慣れっこになっていた。見知らぬ土地に、馴染みのない人たち…そんな出会いと別れの連続の日々を過ごしていたのは、青春の多感な時期だった。
 その何にもしがみ付かず、何も残さない生き方は男にとっては“自分の本質と最もかけ離れた生き方”であった。
 

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 その男の幼児期は、後にして思えば、魂の流浪を学ぶ時間であったようだ。
朝早くから晩まで両親が行商に出て不在の毎日であったために、3歳の頃から他所の家庭に半日預けられて暮らす日常であった。
 預けられた家庭も一箇所ではなく、幼稚園に通うまでの3年間に4つの家庭環境を転々とした。ある家庭でそこの子供にいじめられた事もあれば、粗食をあてがわれ続けて栄養失調になり掛けた事もあった。常に新しい環境と新しい人間関係の中で“やり直しの繰り返し”を続けてきたのだった。

 

☆☆☆

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