「猫の描いた絵本」との出会い [扶侶夢絵本の世界]
セピア色した暖かな記憶が 僕の中には眠っている
目くるめく日常の中で 引き出しの奥にうずくまっているけれど
もしかしたら それはとても大切な思い出なのかも知れない
☆
僕がヒトになった頃 当然のように傍にはネコがいた
名前は「ミーコ」 僕が親兄弟の名前よりも先に口にした名かも知れない
寝起きを共にする仲良しだったくせに
時々イタズラで火鉢に突き落としてみたりする 僕は迷惑な家族だったようだ
そんなミーコも13年間生きて ピカピカの新居に引っ越した年に亡くなってしまった
友だちも居なくなった新しい環境が たぶん暮らしにくかったのだろうね
☆
その後も 何匹もの猫たちが出たり入ったり たくさんのメッセージを届けてくれた
そして僕は若者になって 大人になって 初老の扉の前に立ち
ようやく 一冊の大切な絵本を見つけることが出来た
それは たくさんの猫たちが僕に届けてくれた生命
ひっそりと納屋の奥に仕舞い込まれていた 『猫の描いた絵本』だった。
☆
[猫の描いた絵本/秘話]
ある晩、可愛がっていた子猫が亡くなった。
何処かで農薬を口にしたのか、泡を吹いて玄関先で死んでいた。
目をあけたまま…
きっと早く家に帰って来たかったに違いない。
自分の身体の異変に気がついて、泡を吹きながら、苦しみながら
ようやく玄関先までたどり着いたのだろう。
助けてあげたかった。
せめて頭をなでて、「よくここまで帰って来た」と褒めてあげたかった…
☆
コミカンと呼ばれていたその子猫が
苦しみながらも届けてくれた最期の遺書に触れたとき
それが『猫の描いた絵本』を探し始めるキッカケだった。
その後、親猫ブッチも持病で亡くなった。
ひっそりと納屋の隅の物陰に隠れて亡くなっていた。
ビルの隙間に捨てられて怯えていたのを拾って来たのが始まりだったが
最期もやっぱり、そんな感じで逝っちゃったね。
そしてその傍らに 一冊の絵本が置かれてあった。
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