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書き換えられてゆく思想 [随想随筆]

国葬問題に揺れる国内の政治を見て、平成30年に書いた記事を一部修正して再度アップしようと思う。

【書き換えられてゆく思想】…そんなキーワ-ドが浮かんだ。
21世紀も18年目を迎えて(が過ぎて)新世紀の斬新さが褪せようとしている感じがする。
一例として挙げれば、今世紀に入って“テロリスト”という言葉がこれまでの20世紀とは違った概念で定着しているように思える。「同時多発テロ」という言葉で一般化して広く行き渡ったのは2001年9月11日の貿易センタービル事件だった様に思うが、それによってテロという言葉の意味合いと位置づけが決定的に変わったのではないだろうか。
ジョージH・W・ブッシュ大統領の時にフセイン政権のイラクが“悪の枢軸”と位置付けられたように、世界貿易センタービルのテロ行為がイスラム教徒による聖戦(ジハード)と同系列に息子のジョージ・W・ブッシュ大統領によって“世界の敵”として万民に刻み込まれた。

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私の中にある『テロ』という言葉は、例えば“暴力による世直し”に近い意味合いである。この言葉の意味合いが捉え方として正しいのか間違っているのか分からない。テロを容認する意味ではないけれど、テロ行為自体には単純に“悪意”として片付けられないものがある事を忘れないでおきたいと思う。勿論テロという暴力行為は決して許されるものではない。しかし『テロ』という言葉で括る事で問答無用の悪業行為と結論づける事には多くの危険性を孕んでいる事を忘れてはいけない。世の中の歪んだ正義感が冤罪を生んでいるのが現場を知る者の正直な感想なのだ。
明治維新、二度の世界大戦、朝鮮戦争といった国内外の動乱によって社会基盤は元よりそれまでの日本の思想的基軸は大いに揺さぶりを受けた。今生きている日本人の殆どは(勿論私自身も含めて)それ以前の価値観を実体験として知らない。プロパガンダで歪めて刷り込まれた「旧日本の時代遅れとなった忌まわしい習慣」ばかりが嘲笑されたりもする。必然性があって変化してきた価値観なのだろうが、私が重要と考えるのは「何故こうなったのか?」という因果関係の事実を知る事なのだ。決して過去が素晴らしいとか時代を戻すことを志望するのではなく、自分たちがどう生きてきたのかを検証する事が必要だという事なのだ。
何故なら私たちはいつの時代も「過去を自分の都合の良い様に書き換えて残す習性がある」ねつ造の歴史を生きているからなのだ。
<H30.06.01 記>

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 [追記:反権力に対して反社会的レッテルを貼る]

世の東西を問わず、権力というものは異議を唱える勢力を駆逐するために反社会のレッテルを貼って正義の名のもとに抹殺するという手段を取って来た。そしてその発想と手法は大きな政治問題や社会問題にとどまらず、現代では一般市民の暮らしの中にでも見られる様になって来た。乱暴な言い方をすれば“捏造と冤罪”はごく日常的な現象であり、それは煽情的な大衆の善意の鉄槌が行う愚かしくも悲しい習癖の結果でもある。
マジョリティに対して媚びと寄生で生きている者たちは結局マイノリティを貶める事でしか自己の安息を得られない。一見知性的で善良そうな人間が“身勝手な平和”を得ようとして凶暴な偽善を振りかざす原因はそんなところにあるのかも知れない。

 
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【テロで亡くなった総理大臣と政治家が取り仕切る国葬について】

安倍元総理個人に対して何ら批評・批判するものでもない。ただ今回の国葬の行事に関して日本を取り仕切る政治家たちの愚劣さを感じて杞憂するのである。

国葬の決定は国会で討議される訳でもなく国民の意見を聞くわけでもなく、時の首相が勝手に決めたというところに第一の問題がある。
国葬と云えば、過去に近いところでは「吉田茂」があり大戦中には「山本五十六」があり、どれもが国民の総意を諮るものではなかったが、国家への貢献という意味で推し進められた。(山本五十六の場合は軍神として国民の戦意高揚のための利用でもあったが…)
今回、国会にもかけずに独断即決した裏には、話によれば麻生元首相の差し金でもあった様だが、いずれにしても自民党内での政権を固持するための方策でもあった。人の死をも政治の道具にするこの国の為政者の浅はかさを痛感するが、私が感じたものはもっと根深い絶望感でもあった。

国葬という大事な行事を゛民意を諮らず、国会にも懸けず”独断で行うことは民主国家として間違いだが、その間違いに気づいたなら手順を改める事も民主主義国家の英断だと思っていたのだが、やり直しを恥じて後戻りしない見栄と体裁の国家主権に器量の浅さを見た。そして極端に思うかも知れないが、私はそこに有事の際に国家の名のもとに行う偽りの独断専行を感じた。
あれほど苦い経験をしてきた前の戦争をすっかり忘れて、愚かな為政者に操られるこの国の良民たちに悲しい思いがした。


安倍元総理が心ある人ならば、決してこの国葬を快しとは思わないだろう。迷惑だとも思っているかも知れない。


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